モーズレイ処方ガイドライン第14版(The Maudsley PrescribingGuidelines inPsychiatry 14thEdition)menu open

モーズレイ処方ガイドライン第14版原著の序

『モーズレイ処方ガイドライン』第14版は,新型コロナウイルスによるパンデミックという異常な状況下で執筆された。この世界的現象で数十億人の生活と働き方が大きく変化し,今や我々の多くは,COVID-19による深刻な身体疾患がどのようなものであるかを,自らの経験,あるいは他者の経験の追体験を通じて理解している。

特に医療従事者は甚大な影響を受け,この感染症に罹患した人々を,感染リスクにさらされながら治療している。このような環境において書物の執筆に与えられる優先権は,もしあったとしても極めて低いものである。そうであればこそ私は,この困難な条件下で本ガイドライン第14版の作成に貢献してくれたすべての方々に,限りない心からの感謝を表明する。

言うまでもなく,このパンデミック下でも精神的健康の問題は存続しており,精神疾患に対する最適な治療が必須の責務であることに変わりはない。この目的は,パンデミックが精神的健康に及ぼす影響に我々が取り組むようになるにつれて,一層重要となるであろう。

本ガイドライン第14版は,2017年以降に発表された影響力のある研究結果と,同年以降に臨床導入された主要な向精神薬すべての情報を追加して全面的に更新した。また,激越性せん妄の管理,終末期における向精神薬,向精神薬の静注用製剤,クロザピン筋注薬,週1回経口投与するpenfluridol等を扱う新たな項目を設けたため,本版は少々ページ数が増えた。旧版と同様,第14版も全世界で使用されることを念頭に執筆したが,英国の臨床現場にやや重きを置いている点もこれまで通りである。

クロザピンの使用に関して入念な調査に基づく膨大な執筆で貢献してくれたSiobhan Gee,向精神薬の中止についてエビデンスに基づいた患者中心の指針を作成してくれたMark Horowitz,高齢患者に関するChapterをほぼ独力で執筆してくれたDelia Bishara,非常に多岐にわたる項目について寄稿してくれたIan Osborneには特に敬意を表したい。中毒に関するChapterについて本ガイドライン第4版から第13版までの記述を整理してくれたEmily Finchの仕事はとりわけ評価に値するものである。最後に,細部に至るまで比類のない注意を払いながら忍耐強く本版の制作を管理してくれたアシスタントのIvana Clarkに感謝したい。

David M.Taylor
2021年3月
ロンドン