向精神薬の生化学的・血液学的影響
ほぼすべての向精神薬には血液学的または生化学的な副作用があり,これらの副作用は通常の血液検査で検出することができる。こうした変化の多くは特異体質によるものであり,臨床的な意義に乏しいが,クロザピン等による無顆粒球症等,全血球数による定期的モニタリングが必要な異常もある。他の項でも論じているように,一般に,生化学的・血液学的副作用の発現率が高い薬剤や,稀であっても死に至るおそれのある作用を伴う薬剤の場合は,定期的なモニタリングが必要である。
他の薬剤では,臨床検査値関連の副作用は比較的稀であり(通常は発現率1%未満),原因と思われる薬剤を中止すれば回復可能なことが多く,必ずしも臨床的に重要なものではない。また,併存する身体疾患,多剤併用,乱用薬物やアルコールを含む非処方箋薬物も生化学的・血液学的パラメータに影響を与える可能性があるので注意する。薬剤の投与開始と検査値の変化との時間的関連性が不明なときには,当該薬剤の投与をいったん中止してから再開することを検討する場合がある。作用の原因や重大さに関して疑問がある場合は,必ず適切な情報源から得た専門家の意見を参考にすべきである。
表14.2と表14.3は,これまでに様々な情報源から収集した情報をもとに生化学的・血液学的作用が認められている薬剤をまとめたものである1-9。多くの場合,これらの多様な作用のエビデンスは限られており,主に症例報告,症例集積研究,製薬会社の提供する情報に基づくものである。個々の薬剤に関する詳細な情報については,本書の該当する項や専門家向けの情報源,特に各薬剤の製品情報を参照のこと。
表14.2 向精神薬による生化学的作用の要約
検査項目 | 基準範囲10 | 上昇させることが報告されている薬剤 | 低下させることが報告されている薬剤 |
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT) | 女性:34U/L以下 男性:45U/L以下 (肥満者ではこれより高い場合もある) |
抗精神病薬:アセナピン,benperidol,cariprazine,クロザピン,ハロペリドール,loxapine,オランザピン,フェノチアジン系薬剤,クエチアピン,リスペリドン/パリペリドン 抗うつ薬:agomelatine,bupropion,MAOI,ミアンセリン,ミルタザピン,SNRI,SSRI(特にパロキセチンとセルトラリン),TCA,トラゾドン,ボルチオキセチン 抗不安薬/催眠薬:バルビツール酸系薬剤,ベンゾジアゼピン系薬剤,buspirone,clomethiazole,プロメタジン,スボレキサント,tasimelteon,ゾルピデム 気分安定薬:カルバマゼピン,ラモトリギン,バルプロ酸 その他:アルコール,アトモキセチン,β遮断薬,カフェイン,コカイン,ジスルフィラム,naltrexone,オピオイド系薬剤,精神刺激薬(乱用) |
ビガバトリン |
アルブミン | 35-50g/L (40歳以降は徐々に低下) |
向精神薬投与に伴うメタボリックシンドロームの特徴として,微量アルブミン尿がみられることがある(特にフェノチアジン系薬剤,クロザピン,オランザピン,またクエチアピンでも可能性がある) | アンフェタミンまたはコカインの慢性使用 |
アルカリホスファターゼ (ALP) |
50-120U/L | バクロフェン,β遮断薬,ベンゾジアゼピン系薬剤,カフェイン(過剰/慢性使用),カルバマゼピン,citalopram,クロザピン,ジスルフィラム,デュロキセチン,ガランタミン,ハロペリドール,loxapine,メマンチン,モダフィニル,ノルトリプチリン,オランザピン,フェニトイン,セルトラリン,トピラマート,トラゾドン,valbenazine,バルプロ酸。NMSを誘発する薬剤とも関連している | ブプレノルフィン,fluoxetine(小児),ゾルピデム(稀) |
アンモニア | 11-32μmol/L (食事および運動後には増加する) |
バルビツール酸系薬剤,カルバマゼピン,喫煙,トピラマート,バルプロ酸(脳症の徴候を示すことがある) | 知られているものはない |
アミラーゼ | 28-100U/L | アルコール(急性),ドネペジル,オピオイド系薬剤,プレガバリン,リバスチグミン,SSRI(稀) 膵炎と関連のある薬剤:アルコール,カルバマゼピン,クロザピン,オランザピン,バルプロ酸 |
知られているものはない |
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST) | 女性:34U/L以下 男性:45U/L以下 |
ALT上昇と同じ薬剤やバクロフェン。注:肝障害の指標としてはALTが望ましい | trifluoperazine,ビガバトリン |
重炭酸塩 | 22-29mmol/L | 緩下薬の乱用 | SIADHと関連のある薬剤:すべての抗うつ薬,抗精神病薬(クロザピン,ハロペリドール,オランザピン,フェノチアジン系薬剤,ピモジド,リスペリドン/パリペリドン,クエチアピン),カルバマゼピン。代謝性アシドーシスを引き起こす薬物(アルコール,コカイン,トピラマート,ゾニサミド)とも関連している |
ビリルビン | 21μmol/L以下(総ビリルビン) | アミトリプチリン,アトモキセチン,ベンゾジアゼピン系薬剤,カルバマゼピン,クロルジアゼポキシド,クロルプロマジン,citalopram,clomethiazole,クロザピン,ジスルフィラム,イミプラミン,フルフェナジン,ラモトリギン,meprobamate,ミルナシプラン,オランザピン,フェノチアジン系薬剤,フェニトイン,プロメタジン,セルトラリン,valbenazine,バルプロ酸。胆汁うっ滞/肝障害を引き起こす薬剤とも関連している | バルビツール酸系薬剤 |
C反応性蛋白 | 10mg/L未満 | ブプレノルフィン(稀)。心筋炎を引き起こす薬剤(クロザピン)とも関連している | 知られているものはない |
カルシウム | 2.20-2.60mmol/L(総,補正値) 1.15-1.34mmol/L(イオン化) |
リチウム(稀) | バルビツール酸系薬剤,カルバマゼピン,ハロペリドール,バルプロ酸 |
糖鎖欠損トランスフェリン(CDT) | 1.5%以下 | アルコール(CDT値が1.6-1.9%である場合,高摂取が示唆される。CDT値が2%以上である場合,過剰摂取が示唆される) | 知られているものはない |
クロール | 95-108mmol/L | 高クロール血性代謝性アシドーシスを引き起こす薬剤:トピラマート,ゾニサミド | SIADHと関連のある薬剤:すべての抗うつ薬,抗精神病薬(クロザピン,ハロペリドール,オランザピン,フェノチアジン系薬剤,ピモジド,リスペリドン/パリペリドン,クエチアピン),カルバマゼピン,緩下薬の乱用 |
(総)コレステロール | 5.2mmol/L以下 (通常は基準範囲ではなく推奨される作用限界値と比較) |
抗精神病薬,特にメタボリックシンドロームと関連する薬剤(フェノチアジン系薬剤,クロザピン,オランザピン,クエチアピン)。稀:アリピプラゾール,β遮断薬(クロザピンとの相加効果),カルバマゼピン,ジスルフィラム,デュロキセチン,メマンチン,ミルタザピン,モダフィニル,フェニトイン,リバスチグミン,セルトラリン,ベンラファキシン | プラゾシン,甲状腺薬 |
クレアチンキナーゼ | 女性:25-200U/L 男性:40-320U/L (白人における範囲。他の人種ではこれより高値の場合もある) |
bremelanotide,ブレクスピプラゾール,cariprazine,クロニジン,クロザピン(けいれん発作と関連する場合),コカイン,dexamfetamine,ドネペジル,オランザピン,プレガバリン。NMSおよびSIADHを誘発する薬剤,筋肉内投与する薬剤とも関連している | 知られているものはない |
クレアチニン | 女性:55-100μmol/L 男性:60-120μmol/L |
クロザピン,リチウム,ルラシドン,thioridazine,バルプロ酸,横紋筋融解症と関連のある薬剤(ベンゾジアゼピン系薬剤,dexamfetamine,プレガバリン,thioridazine)。腎機能障害,NMS,SIADHを誘発する薬剤とも関連している | 知られているものはない |
フェリチン | 女性:15-150μg/L 男性:30-400μg/L (年齢とともに増加) |
アルコール(急性およびアルコール性肝疾患) | 知られているものはない |
γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT) | 女性:38U/L以下 男性:55U/L以下 (アフリカ系人種の場合は上限値が2倍高い) |
抗うつ薬:ミルタザピン,SSRI(パロキセチンおよびセルトラリンとの関連が示唆されている),TCA,トラゾドン,ベンラファキシン 抗てんかん薬/気分安定薬:カルバマゼピン,ラモトリギン,フェニトイン,phenobarbitone,バルプロ酸 抗精神病薬:benperidol,クロルプロマジン,クロザピン,フルフェナジン,ハロペリドール,オランザピン,クエチアピン その他:アルコール,バルビツール酸系薬剤,clomethiazole,dexamfetamine,モダフィニル,喫煙 |
知られているものはない |
グルコース | 空腹時:2.8-6.1mmol/L 随時:11.1mmol/L未満 |
抗うつ薬:MAOI*,SSRI/SNRI*,TCA* 抗精神病薬:クロルプロマジン,クロザピン,ハロペリドール*,オランザピン*,クエチアピン,その他 乱用物質:アンフェタミン,メサドン,オピオイド系薬剤 その他:バクロフェン,β遮断薬*,bupropion*,カフェイン*(糖尿病),クロニジン,ドネペジル,ガバペンチン,ガランタミン,リチウム*,ニコチン,交感神経興奮薬,甲状腺薬,valbenazine |
アルコール。稀にデュロキセチン,ハロペリドール,プレガバリン,TCAと関連。メタボリックシンドロームと関連のある薬剤は,血糖値上昇や低下をもたらす可能性がある |
HbA1c | 20-39mmol/mol | リチウム,MAOI,SSRI | |
乳酸脱水素酵素 | 90-200U/L (年齢とともに徐々に上昇する) |
ベンゾジアゼピン系薬剤,クロザピン,メサドン,TCA(特にイミプラミン),バルプロ酸。NMSを誘発する薬剤とも関連している | 知られているものはない |
リポ蛋白:HDL | 1.2mmol/L超 | カルバマゼピン,ニコチン,フェノバルビタール,フェニトイン | β遮断薬,オランザピン,フェノチアジン系薬剤,バルプロ酸 |
リポ蛋白:LDL | 3.5mmol/L未満 | β遮断薬,カフェイン(異論あり),カルバマゼピン,クロルプロマジン,クロザピン,iloperidone,メマンチン,ミルタザピン,モダフィニル,オランザピン,フェノチアジン系薬剤,クエチアピン,リスペリドン/パリペリドン,リバスチグミン,ベンラファキシン | プラゾシン |
リン酸 | 0.8-1.5mmol/L | dexamfetamine,NMSを誘発する薬剤とも関連している | カルバマゼピン,リチウム,ミアンセリン,トピラマート |
カリウム | 3.5-5.3mmol/L | β遮断薬,リチウム | アルコール,ジスルフィラム,カフェイン,コカイン,ハロペリドール,リチウム,ミアンセリン,プレガバリン,reboxetine,リバスチグミン,sodium oxybate,交感神経興奮薬,トピラマート,ゾニサミド。振戦せん妄をきたす薬剤も同様と考えられる |
プロラクチン | 正常:350mU/L未満 異常:600mU/L超 |
抗うつ薬:特にアモキサピン,MAOI,TCA。SSRIおよびベンラファキシンとの関連も示唆されている 抗精神病薬:amisulpride,ハロペリドール,ピモジド,リスペリドン/パリペリドン,スルピリド等(アリピプラゾール†,アセナピン,ブレクスピプラゾール,cariprazine,クロザピン,ルラシドン,オランザピン,クエチアピン,ziprasidoneがプロラクチン値に及ぼす影響は少ない) その他:ベンゾジアゼピン系薬剤,buspirone,deutetrabenazine,オピオイド系薬剤,ラメルテオン,テトラベナジン,valbenazine |
アリピプラゾール,ドパミン作動薬,ピレンゼピン |
(総)蛋白質 | 60-80g/L | 知られているものはない | オランザピン(稀) |
ナトリウム | 133-146mmol/L | リチウム(過量投与時) | 抗うつ薬:特にSSRI/SNRI。その他も関連が示唆されている 抗精神病薬:すべて(SIADHを介して) 気分安定薬:カルバマゼピン,リチウム,バルプロ酸 その他:ベンゾジアゼピン系薬剤,クロニジン,ドネペジル,メマンチン,リバスチグミン 抗うつ薬を投与中の患者に錯乱,けいれん,または傾眠状態が生じた場合は,低ナトリウム血症の可能性を考慮すべきである |
テストステロン | 男性:9.9-27.8nmol/L 女性:0.22-2.9nmol/L |
ジアゼパム | オピオイド系薬剤,ラメルテオン |
甲状腺刺激ホルモン | 0.3-4.0mU/L | アリピプラゾール,カルバマゼピン,リチウム,クエチアピン,リバスチグミン,セルトラリン,バルプロ酸(わずか) | moclobemide,甲状腺薬 |
サイロキシン | 遊離:9-26pmol/L 総:60-150nmol/L |
稀:アンフェタミン(重度の乱用),moclobemide,プロプラノロール | バルビツール酸系薬剤,カルバマゼピン,リオチロニン,リチウム(T4の分泌を抑制),オピオイド系薬剤,フェニトイン,バルプロ酸。稀に関連が示唆される:アリピプラゾール,クロザピン,クエチアピン,リバスチグミン,セルトラリン |
トリグリセリド | 知られているものはない | ||
トリヨードサイロニン | 遊離:3.0-6.8pmol/L,総:1.2-2.9nmol/L | ヘロイン,メサドン | 遊離T3:バルプロ酸,総T3:カルバマゼピン,リチウム,プロプラノロール |
尿酸 | 女性:0.16-0.36mmol/L 男性:0.21-0.43mmol/L (年齢とともに上昇) |
アルコール(急性),カフェイン(偽陽性),クロザピン,レボドパ,オランザピン,ピンドロール,プラゾシン,トピラマート,ゾニサミド | セルトラリン(わずか) |
尿素 | 2.5-7.8mmol/L (年齢とともに上昇) |
カルバマゼピン,レボドパ。稀に,抗てんかん薬過敏症症候群および横紋筋融解症に関連する薬剤によって生じることがある | 知られているものはない |
*低血糖症に関連することもある。
†正常値未満のプロラクチン濃度に関連することもある。
HDL:高比重リポ蛋白,LDL:低比重リポ蛋白,MAOI:モノアミン酸化酵素阻害薬,NMS:神経遮断薬悪性症候群,SIADH:抗利尿ホルモン不適合分泌症候群,SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬,SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬,TCA:三環系抗うつ薬
表14.3 向精神薬による血液学的作用の要約
検査項目 | 基準範囲 | 上昇させることが報告されている薬剤 | 低下させることが報告されている薬剤 |
活性化部分トロンボプラスチン時間 | 23-33秒間 | フェノチアジン系薬剤(特にクロルプロマジン) | モダフィニル(稀) |
好塩基球 | 0.0-0.1×109/L | クロザピン,TCA(特にdesipramine) | 知られているものはない |
好酸球 | 0.04-0.40×109/L | アモキサピン,β遮断薬,bupropion,buspirone,カルバマゼピン,抱水クロラール,クロルプロマジン,クロナゼパム,クロザピン,ドネペジル,フルフェナジン,ハロペリドール,loxapine,meprobamate,マプロチリン,メチルフェニデート(静脈内乱用のみ),モダフィニル,naltrexone(非経口投与),オランザピン,プロメタジン,クエチアピン,リスペリドン/パリペリドン,SSRI,TCA,tetrazepam,トリプトファン*,バルプロ酸,ベンラファキシン。過敏性症候群を起こす薬剤の特徴かもしれない | 知られているものはない |
赤血球沈降速度 | 女性:1-12mm/時 男性:1-10mm/時 (年齢とともに上昇) |
クロザピン,dexamfetamine,レボメプロマジン,マプロチリン,SSRI | ブプレノルフィン |
へモグロビン | 女性:115-165g/L 男性:130-180g/L |
クロザピン,テストステロン,喫煙 | アリピプラゾール,バルビツール酸系薬剤,ブプレノルフィン,bupropion,カルバマゼピン,クロルジアゼポキシド,クロルプロマジン,ドネペジル,デュロキセチン,ガランタミン,MAOI,メマンチン,meprobamate,ミアンセリン,フェニトイン,プロメタジン,リバスチグミン,トラマドール,trifluoperazine,ビガバトリン |
リンパ球 | 1.5-4.5×109/L | naltrexone,オピオイド系薬剤,喫煙,バルプロ酸。過敏性症候群を引き起こす薬剤の特徴かもしれない | アルコール(慢性),抱水クロラール,クロザピン,リチウム,ミルタザピン(稀) |
平均赤血球血色素量 | 27-32pg | 巨赤芽球性貧血と関連のある薬剤,例:すべての抗けいれん薬,亜酸化窒素 | 知られているものはない |
平均赤血球血色素濃度 | 320-360g/L | ||
平均赤血球容積 | 80-100fL | アルコール | |
単球 | 0.2-0.8×109/LL | ハロペリドール | 知られているものはない |
好中球 | 2.0-7.5×109/L(人種性良性好中球減少症のため,アフリカ系人種では上記よりも低い場合もある) | bupropion,カルバマゼピン†,citalopram,クロルプロマジン,クロザピン†,デュロキセチン,fluoxetine,フルフェナジン,ハロペリドール,ラモトリギン,リチウム,マプロチリン,オランザピン,クエチアピン,リスペリドン/パリペリドン,リバスチグミン,tiotixene,トラゾドン,ベンラファキシン | 無顆粒球症と関連あり:アモキサピン,アリピプラゾール,バルビツール酸系薬剤,カルバマゼピン,クロルジアゼポキシド,クロルプロマジン,クロザピン‡,コカイン(混合品),ジアゼパム,フルフェナジン,ハロペリドール,meprobamate,ミアンセリン,ミルタザピン,オランザピン,ピレンゼピン,プロメタジン,リスペリドン/パリペリドン,TCA(特にイミプラミン),tranylcypromine,バルプロ酸 白血球減少症と関連あり:アミトリプチリン,アモキサピン,アセナピン,bupropion,カルバマゼピン,cariprazine,citalopram,クロルプロマジン,クロミプラミン,クロナゼパム,クロザピン,デュロキセチン,fluoxetine,フルフェナジン,ガランタミン,ハロペリドール,ラモトリギン,ロラゼパム,lumateperone,ルラシドン,メマンチン,meprobamate,ミアンセリン,ミルタザピン,モダフィニル,亜酸化窒素,オランザピン,oxazepam,phenelzine,プレガバリン,プロメタジン,クエチアピン,tranylcypromine,バルプロ酸,ベンラファキシン,ziprasidone 好中球減少症と関連あり:セルトラリン,トラゾドン,バルプロ酸 |
ヘマトクリット値 | 女性:0.37-0.47L/L 男性:0.40-0.52L/L |
クロザピン(稀),テストステロン | ベンゾジアゼピン系薬剤(稀),ブプレノルフィン,naltrexone,ビガバトリン |
血小板 | 150-450×109/L | ラモトリギン,リチウム† | アルコール,バルビツール酸系薬剤,β遮断薬,ベンゾジアゼピン系薬剤,bupropion,buspirone,カルバマゼピン,クロルジアゼポキシド,クロルプロマジン,クロナゼパム,クロニジン,クロザピン†,コカイン,ジアゼパム,ドネペジル,デュロキセチン,fluoxetine,フルフェナジン,ラモトリギン,meprobamate,メサドン,メチルフェニデート,ミルタザピン,naltrexone,亜酸化窒素,オランザピン,ピレンゼピン,プロメタジン,クエチアピン,リスペリドン/パリペリドン,リバスチグミン,セルトラリン,TCA,tranylcypromine,トラゾドン,trifluoperazine,バルプロ酸,ベンラファキシン,ziprasidone。過敏性症候群を起こす薬剤も同様と考えられる 血小板凝集障害と関連がある薬剤:クロルジアゼポキシド,citalopram,ジアゼパム,fluoxetine,フルボキサミン,パロキセチン,ピラセタム,セルトラリン,バルプロ酸 |
プロトロンビン時間(PT)/国際標準比(INR) | PT:10-13秒 INR:0.8-1.2 |
抱水クロラール,ジスルフィラム,fluoxetine,フルボキサミン,ミルタザピン,バルプロ酸。ワルファリンと相互作用する薬剤とも関連している | バルビツール酸系薬剤,カルバマゼピン,フェニトイン,tiotixene |
赤血球数 | 男性:4.5-6.5×1012/L 女性:3.8-5.8×1012/L |
リチウム,テストステロン | ブプレノルフィン,カルバマゼピン,クロルジアゼポキシド,クロルプロマジン,ドネペジル,ハロペリドール,meprobamate,フェニトイン,クエチアピン,trifluoperazine |
赤血球分布幅 | 11.5-14.5% | 貧血と関連する薬剤,例:カルバマゼピン,クロルジアゼポキシド,citalopram,クロナゼパム,ジアゼパム,ラモトリギン,メマンチン,ミルタザピン,セルトラリン,tranylcypromine,トラゾドン,バルプロ酸,ベンラファキシン | 知られているものはない |
網赤血球数 | 0.5-2.5% (または50-100×109/L) |
知られているものはない | カルバマゼピン,クロルジアゼポキシド,クロルプロマジン,meprobamate,フェニトイン,trifluoperazine 赤芽球癆と関連あり:カルバマゼピン,クロザピン,バルプロ酸 |
*以前に報告された好酸球増多-筋痛症候群は該当する製造業者による不純物の混入が原因であると考えられる。
†値は上昇または低下することがある。
‡稀に,クロザピン投与に伴い循環血中の好中球が減少する「朝型の偽好中球減少症(morning pseudo-neutropenia)」が報告されている。好中球数は概日リズムを示すと考えられるため,1日の遅い時間に再度全血球数(FBC)の検査を行うと有益であるかもしれない。
MAOI:モノアミン酸化酵素阻害薬,SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬,TCA:三環系抗うつ薬
<編集協力者コメント>
アンモニア,ビリルビン,クレアチニンなど,基準範囲の単位が mol になっているものがあるが,本邦では g が一般的である。
(岩田 祐輔)
参照文献
- BMJ Group and Pharmaceutical Press. British National Formulary 2020; https://www.medicinescomplete.com.
- Aronson J. Meyler Side Effects of Drugs: the International Encyclopedia of Adverse Drug Reactions and Interactions. Elsevier Science; 2015.
- Foster R. Clinical Laboratory Investigation and Psychiatry. A Practical Handbook. New York: Informa 2008.
- Oyesanmi O, et al. Hematologic side effects of psychotropics. Psychosomatics 1999; 40 : 414–421.
- Stubner S, et al. Blood dyscrasias induced by psychotropic drugs. Pharmacopsychiatry 2004; 37 Suppl 1:S70-S78.
- Pharmaceutical Press. Martindale: the Complete Drug Reference (online) 2020; https://www.medicinescomplete.com.
- LiverTox: clinical and Research Information on Drug-Induced Liver Injury. Bethesda (MD): National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases 2012; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK547852.
- Medicines Complete. AHFS Drug Information 2020; https://www.medicinescomplete.com/mc/ahfs/current.
- U.S. Food & Drug Administration. Drugs@FDA: FDA-Approved Drugs 2020; https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf.
- Association for Clinical Biochemistry and Laboratory Medicine. Analyte Monographs Alongside the National Library of Medicine Catalogue 2020; http://www.acb.org.uk/whatwedo/science/amalc.aspx.