うつ病治療の公式なガイドライン
NICEガイドライン1:要約
- 発症後まもないうつ病,軽度のうつ病に対しては,抗うつ薬は第一選択の治療法として推奨されない。積極的なモニタリング,個人に合わせたセルフヘルプ,認知行動療法(CBT),運動が好ましい。
- 抗うつ薬は,中等度-重度のうつ病,気分変調症に対する治療として推奨される。
- 抗うつ薬を処方する際には,ジェネリックの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が推奨される。
- すべての患者に,抗うつ薬による離脱症状(中断症状)に関する情報を提供する。
- 治療抵抗性うつ病に対しては,リチウムや抗精神病薬,または2剤目の抗うつ薬を追加する等の増強療法を含む治療戦略が推奨される(本Chapterの治療抵抗性うつ病の治療に関する項を参照)。
- うつ病エピソードの既往が2回あり,機能的な障害がある場合は,少なくとも2年間は治療を継続すべきである。
- 電気けいれん療法(ECT)は,重症例や治療抵抗性うつ病に対して支持されている。
本書執筆の時点では,新版のNICEガイドラインは草稿の形式でのみ閲覧可能である4。基本原則は前版と変わらないと思われるが,最初の治療が無効であった場合の薬剤選択に関して重要な変更が提言されている(本Chapterの「うつ病の薬物療法」の項を参照)。ガイドラインの最終版は2021-22年に公開される予定である。
本Chapterでは抗うつ薬の使用を中心に論じ,薬剤の選択,投与法,抗うつ薬の切り替え,治療の優先順位に関する推奨を提示する。本書では薬物療法以外の治療法に関してはほとんど触れないが,これは薬物療法以外の治療法の有効性が信頼できないということを意味するのではなく,本書は処方ガイドラインのため薬物療法に限定して論じているに過ぎない。
(桐野 創)
参照文献
- National Institute for Clinical Excellence. Depression: the treatment and management of depression in adults. Clinical Guidance [CG90]. 2009 (last reviewed December 2013); https://www.nice.org.uk/guidance/cg90 .
- George MS, et al. Vagus nerve stimulation for the treatment of depression and other neuropsychiatric disorders. Expert Rev Neurother 2007; 7:63-74.
- Loo CK, et al. A review of the efficacy of transcranial magnetic stimulation (TMS) treatment for depression, and current and future strategies to optimize efficacy. J Affect Disord 2005; 88:255-267.
- National Institute for Health and Care Excellence. Depression in adults: treatment and management - full guideline (Draft for Consultation). 2017; https://www.nice.org.uk/guidance/GID-CGWAVE0725/documents/draft-guideline .