モーズレイ処方ガイドライン第14版(The Maudsley PrescribingGuidelines inPsychiatry 14thEdition)menu open

ニコチンと禁煙

喫煙は世界における疾患および早期死亡の主要かつ予防可能な原因である。精神疾患の有無を問わず,禁煙介入は臨床的にも医療経済的にも有効である。

英国ではNICEにより,在宅あるいは入院して精神科のケアを受けている人を含め,すべての喫煙者に禁煙のサポートを提供し,禁煙できない人や気が進まない人には病院で一時的禁煙の治療を提供することを推奨している1

禁煙希望者に対する禁煙薬物療法の第一選択としてNICEが推奨しているのは,ニコチン補充療法(NRT),バレニクリン,bupropionの3つで,いずれの薬物療法でも禁煙成功率が少なくとも2倍になる。禁煙成功率は,訓練を受けたタバコ依存症治療アドバイザーから行動に関するサポートを受けることで,さらに上昇させることができる2

禁煙できないと感じている人や気が進まない人には,紙巻きタバコのニコチンをNRTあるいは電子タバコ/ベイピング器具に置き換えて,害を最小化することを奨励する3, 4

禁煙治療の有効性は,様々な精神的健康問題を抱える人々においても減弱することはないようである5

ニコチン補充療法(NRT)

NRTは,12歳以上で,禁煙または禁煙に先立ち喫煙量を減らすことを望んでいる喫煙者,あるいは一時的な強制禁煙期間を課されて喫煙が不可能な状況の喫煙者に対して承認されている。また,禁煙を試みる妊婦および授乳婦も適応となる。

禁煙をする人に対するNRTの目的は,喫煙から完全な禁煙への移行の補助である。紙巻きタバコから摂取するニコチンの一部を一時的にNRT製剤に置き換え,ニコチン離脱症状と喫煙意欲を最小化することで,禁煙を達成する。禁煙中で,ニコチンの娯楽的摂取の継続や喫煙再開の予防を望む人は,NRTを安全に使用することができる。

NRTには多様な禁煙用製剤がある。英国では現在,経皮貼付剤,トローチ,ガム,舌下錠,吸入剤,点鼻スプレー薬,口腔スプレー薬,口腔フィルムの8種類のNRT製剤が承認されている。

これらの製剤はすべて自由販売医薬品であり,市販されている(英国)。NRTは,貼付剤では皮膚,その他の薬剤では口腔または鼻粘膜を通して体内吸収されるよう製剤化されている。そのため,紙巻きタバコ喫煙による吸入と比較してNRTによるニコチン吸収は非常に緩徐であり,NRT中毒になる可能性は低い6

臨床効果

NRTは最もよく研究されている禁煙薬物療法である。計50,000例以上の喫煙者を対象とした150件以上の研究が行われてきた。剤形を問わないNRTによる禁煙成功のプラセボに対するオッズ比(OR)は1.84である。併用NRT(2種類の製剤の組み合わせ。例えば貼付剤と口腔/点鼻薬)は単剤NRTと比較して有効性が高い。併用NRTによる禁煙成功の単剤NRTに対するORは1.43である。併用NRTの有効性はバレニクリンと同等であり,bupropionよりも高い(表4.157

表4.15 ニコチン製剤の種類と用量

  20本/日未満の喫煙 20本/日超の喫煙,または起床後30分以内に喫煙
外用貼付剤
24時間用(21mg,14mg,7mg)
16時間用(25mg,15mg,10mg)
20本/日超の喫煙の場合は21mg(24時間用)または25m(16時間用)貼付剤を使用。16時間用と24時間用の間に有効性の差はない。16時間用貼付剤は就寝時に取り外す
点鼻スプレー薬(0.5mg/回) 喫煙欲求がある場合にそれぞれの鼻孔に1噴射ずつ。1時間に最大2回まで,1日最大64噴射まで
口腔スプレー(1mg/回) 喫煙欲求がある場合に1-2噴射。エピソード毎に最大2噴射,1時間に最大4噴射,1日最大64噴射まで
トローチ(1mg,2mg,4mg) 1mgのトローチを1時間に1錠使用し,喫煙欲求を予防する 2mgまたは4mgのトローチを1時間に1錠使用し,喫煙欲求を予防する。通常は1日最大15錠まで
ガム(2mg,4mg,6mg) 2mgのガムを1時間に1個使用し,喫煙欲求を予防する 4mgまたは6mgのガムを1時間に1個使用し,喫煙欲求を予防する。4mgのガムを1日最大15個まで
吸入剤(15mg) 15mgのカートリッジを1日最大6個まで
舌下錠(2mg) 1時間に1-2錠で喫煙欲求を予防する 1時間に2錠で喫煙欲求を予防する。
1日最大40錠まで
口腔フィルム(2.5mg) 2.5mgのフィルムを1時間に1枚で喫煙欲求を予防する 1時間に1枚で喫煙欲求を予防する。
1日最大15枚まで

一般集団における喫煙者を対象とした研究では,喫煙頻度と喫煙強度によって異なるが,紙巻きタバコ1本につき約1-2.9mgのニコチンを摂取することが示唆されている8 。統合失調症を有する喫煙者を対象とした研究で得られた知見では,統合失調症患者は精神的健康に問題がない人と比較して,短い時間で頻繁に吸入するため,紙巻きタバコからより多くのニコチンを摂取することが示されている9 。そのため,統合失調症を有する喫煙者には,より高用量のNRTが必要と考えられる。

口腔用製剤によるニコチンは,頬,歯肉,舌下で吸収する必要がある。正しい投与法は,味が強くなるまでガムを噛んだ後/トローチを舐めた後,頬と歯肉の間に挟む。味が消えかけたらこのプロセスを20-30分間繰り返す。ガムを使用する人の多くは,ガムを歯肉に押し付けて接触面積を広げ,ニコチン吸収率を高めている。トローチでもニコチンの舌下吸収は可能だが,物理的に大きいため,トローチを細かく砕かない限り舌下での使用は通常できない。舌下錠の方が,サイズははるかに小さい。

コーヒーや炭酸飲料を摂取すると,口腔ニコチン製剤の吸収が阻害される場合がある10

副作用

NRT使用による副作用は,製剤の種類に関連しており,貼付剤では皮膚刺激,口腔製剤では口腔内刺激や咳嗽等がみられる。喫煙を継続している場合は悪心が発現する可能性がある。治療初期には睡眠障害がみられる可能性があるが,これはニコチン離脱症状でもある。NRTには向精神薬との既知の相互作用はない。

バレニクリン

バレニクリンは選択的ニコチン性アセチルコリン受容体部分作動薬である。ニコチンの作用を模倣して,中脳辺縁系でドパミンを持続的に放出させる。また,ニコチン摂取によるドパミン放出を阻害する。すなわち,処方通りにバレニクリンを使用すると喫煙の薬理学的報酬効果が小さくなり,喫煙者の満足感が減少する。バレニクリンは禁煙する意欲のある18歳以上の喫煙者が適応となる。

臨床効果

最新のコクラン・レビューによると,バレニクリンによる禁煙継続のプラセボに対するORは2.24である。バレニクリンの有効性はbupropion(OR 1.39)および単剤NRT(OR 1.25)よりも高く,併用NRTと同等であることが示されている11, 12。重度精神疾患を有する喫煙者における禁煙成功率は,バレニクリンによりプラセボと比較して4-5倍改善した13, 14

計画および用量

喫煙者は,バレニクリン治療開始後1-2週間の時点に禁煙目標日を設定すべきである。目標日を1-2週間後までの時点に設定することを望まない,あるいは設定できない場合は,5週間以内の目標日を各自で設定する。投与レジメンは,本Chapterに掲載した「禁煙しようとしている人の治療アルゴリズム」(表 4.16)に示す。12週間の最後で禁煙に成功した患者では,禁煙維持のために1mg 1日2回をさらに12週間継続することを検討してもよい15

副作用

よくみられる副作用は,悪心,奇妙な夢,睡眠障害,頭痛等であり,いずれも10人に1人以上で発現する。バレニクリンには向精神薬との既知の薬物動態学的相互作用はない。

英国では2016年まで,バレニクリンには精神的健康に問題がある人には安全性モニタリングの追加が必要とされることを示す,黒い三角マークが付けられていた。しかし,Evaluating Adverse Events in a Global Smoking Cessation Study(EAGLES)の研究結果を受け,欧州医薬品庁はこのマークを削除した。EAGLES研究では,バレニクリンおよびbupropionはいずれも,精神疾患の既往の有無を問わず,プラセボまたはニコチン貼付剤と比較して精神神経系の有害事象(不安,抑うつ,攻撃性,精神病,自殺行動等)のリスクを有意には上昇させないことが確認された16

bupropion

bupropionはドパミンおよびアドレナリン作動性抗うつ薬であり,さらにニコチン性アセチルコリン受容体拮抗作用を持つ。禁煙する意欲のある18歳以上の喫煙者が適応となる。

臨床効果

最新のコクラン・レビューによると,bupropionによる禁煙成功のプラセボに対するリスク比(RR)は1.64であった12。bupropionの有効性は単剤NRTと同等であり(RR 0.99),バレニクリンおよび併用NRTと比較して禁煙に対する効果が低かった7(ただし,1件の研究ではbupropionによる転帰はバレニクリンと概ね同様であることを示唆17)。重度精神疾患を有する喫煙者において,bupropionにより禁煙成功率はプラセボと比較して3-4倍上昇した13, 14

計画および用量

喫煙者は,bupropion治療開始後2週間以内の時点に「禁煙目標日」を設定すべきである。投与レジメンは,本Chapterに掲載された「禁煙しようとしている人の治療アルゴリズム」(表 4.16)に示す。

副作用

bupropionはてんかん,摂食障害,アルコール依存症の患者では禁忌である。双極性障害の患者における躁転の可能性(リスクは非常に低いが起こりうる18)に臨床医は注意する必要がある。よくみられる副作用には,浮動性めまい,味覚変化,胃腸障害,不眠等があるが,不眠は就寝前の投与を避けることで軽減することができる。NRTやバレニクリンとは異なり,bupropionには向精神薬との相互作用があることが知られている。bupropionはCYP2B6で代謝される。シトクロムによる代謝を誘導(例:カルバマゼピン,フェニトイン)あるいは阻害(例:バルプロ酸)する薬剤の併用は,bupropionの臨床効果に影響を及ぼす可能性があり,慎重に行うべきである。bupropionはCYP2B6阻害作用もあるため,この酵素で代謝される薬剤(例:リスペリドン,ハロペリドール)との併用は避ける必要がある。

電子タバコおよびベイピング

電子タバコはタバコ葉を含有せず煙を出さないニコチン送達器具であり,欧州連合タバコ製品指令(European Union Tobacco Products Directive)により規制されている(成分,包装,広告の規制)。電子タバコ製造業者は,英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)に医薬品として承認申請することができる。現在,MHRAは電子タバコ1製品を承認しているが,製造業者により販売はされていない。つまり,現時点ではEU内で電子タバコを処方することはできない。英国公衆衛生庁とCare Quality Commission(CQC)は,精神的健康に問題がある入院患者の電子タバコおよびベイピング器具の使用を支持している19-21

臨床効果

禁煙のための電子タバコの効果についての最新のコクラン・レビューでは,ニコチンを含有する電子タバコを使用することにより,ニコチンを含有しない電子タバコ(RR 1.71)およびNRT(RR 1.69)と比較して,禁煙成功率が有意に高くなることが示されている22。2013年以降,英国では電子タバコが最も人気の高い禁煙補助法となっており,2017年には,他の方法では喫煙を続けていたであろうおよそ50,700-69,930人の喫煙者が電子タバコを使用して禁煙に成功したと推定されている23。電子タバコは,精神疾患を有する喫煙者の喫煙量減少にも有効であるとするエビデンスがわずかにある24。

種類と用量

欧州では,使い捨て充填済みカートリッジまたはポッドと電子タバコ用リキッドボトルのラベルに1mLあたりのニコチン含有量(mg)あるいは質量体積パーセント濃度(%w/v)が表示され,ニコチン含有量は0mg/mL(0%)から最大20mg/mL(2%)の範囲である。最近,電子タバコ使用者の間でニコチンソルト(電子タバコ用リキッドの代替)が普及している。ソルトの方がpHが低く,喉越しが滑らかで,一部の使用者にはより喫煙に類似した使用感が得られるようである。また,ニコチンソルトはより低温で蒸発し,より高濃度のニコチンを吸入できるため24,喫煙からベイピングへの切り替えに有用であるかもしれない。

電子タバコには様々なタイプと形状がある。電子タバコのいくつかのタイプを以下に示す。

  • 使い捨て式の製品(「cigalikes」と呼ばれることが多い)
  • 交換式のカートリッジまたはポッドを使用する設計の,再利用できる充電式キット
  • 使用者が電子タバコ用リキッドを再充填する設計の,再利用できる充電式キット(タンク型と呼ばれることが多い,現在では再充填できるポッドも利用できる)
  • 例えば電池から発熱体への電力供給を調節することにより,使用者が製品をカスタマイズできるため,「mods」(改変可能な器具)と呼ばれることが多い,再利用できる充電式キット
副作用

電子タバコの使用に伴い最もよく報告される症状は,口と喉の刺激,咳嗽,頭痛および悪心で,時間とともに軽減する22。英国王立内科医協会4 ,英国公衆衛生庁25,Committee on Toxicity of Chemicals in Food, Consumer Products and the Environment 26 は,喫煙依存者およびその周りの人にとって,規制対象の電子タバコ/ベイピング製品は紙巻きタバコよりも大幅に有害性が低い代替品であると勧告している。英国王立内科医協会4 は,長期間の電子タバコでの蒸気吸入による健康への危害は,紙巻きタバコの喫煙による危害の5%を超えない可能性があることを示唆している。喫煙とベイピングを併用(兼用)しても健康に有害な影響を及ぼすリスクは軽減されないと考えられ,ベイピング使用者には完全な禁煙を奨励するべきであると同時に,喫煙経験のない人には喫煙もベイピングもしないことを奨励するべきである24, 26

表4.16  禁煙しようとしている人の治療アルゴリズム

 禁煙の第一選択の薬物療法は,併用NRTまたはバレニクリンである。
少なくとも週に1回,訓練を受けたタバコ依存症治療アドバイザーによる支援を受けるべきである。
併用NRTによる禁煙 バレニクリンによる禁煙
20本/日を超える喫煙,または起床後30分以内に喫煙:
21mg(24時間用)または25mg(16時間用)貼付剤と,使用者の選択により口腔/点鼻NRT製剤で開始する
貼付剤の用量を4週毎に減らすために,貼付剤の使用は最長12週間継続する
喫煙欲求がある間は口腔/点鼻薬の使用を継続する
バレニクリン治療開始後1-2週の時点に「禁煙目標日」を設定する
1-3日目はバレニクリン0.5mgを1日1回経口投与から開始する
4-7日目にはバレニクリン0.5mgを1日2回経口投与に増量する
8-84日目にはバレニクリン1mgを1日2回経口投与に増量する
最初の12週間のバレニクリン治療期間の最後に禁煙に成功した患者には,禁煙維持のため,バレニクリン1mg1日2回をさらに12週間継続することを検討する
20本/日未満の喫煙かつ起床後30分以内には喫煙しない:
14mg(24時間用)または15mg(16時間用)貼付剤と,使用者の選択により口腔/点鼻NRT製剤の,両方またはいずれかで開始する
貼付剤の用量を4週毎に減らすために,貼付剤の使用は最長12週間継続する
喫煙欲求がある間は口腔/点鼻薬の使用を継続する
第二選択として,もしくは喫煙者が希望する場合には,bupropionによる治療を検討してもよい
bupropionによる禁煙
bupropion治療開始後1-2週の時点に「禁煙目標日」を設定する
1-6日目はbupropion 150mg/日の経口投与から開始する
7-49日目にはbupropion 150mgを1日2回経口投与に増量する(8時間以上間隔をあける)
50-63日目にはbupropion 150mgを維持する(禁煙していない場合は投与を中止する)
重篤な精神疾患を有する患者では,バレニクリンおよびbupropionはいずれも,禁煙成功の確率をプラセボの4倍に上昇させる。併存する精神疾患が安定している患者では,NRT貼付剤も,禁煙成功の確率をプラセボの2倍に上昇させる。バレニクリンおよびbupropionはいずれも,精神疾患の既往を問わず,プラセボまたはNRTと比較して,精神神経的有害事象(不安,抑うつ,攻撃性,精神病,自殺行動等)のリスクを有意に上昇させることはなかった
禁煙治療中は必ず,患者の精神症状をモニタリングすることが望まれる
喫煙者が禁煙のために電子タバコの使用を望む場合は,通常は禁煙予定日を設定し,できるだけ早くすべての紙巻きタバコを電子タバコに置き換えることで,電子タバコを使用して一気に禁煙するべきである。あるいは,完全に切り替えるまで数週間をかけて紙巻きタバコの喫煙量を徐々に減らし,電子タバコの使用を増やしてもよい。NRTの場合と同様に,電子タバコを用いて禁煙する人には高濃度のニコチンで開始するよう勧める

表4.17  禁煙しようとしていない人(一時的に禁煙しているか,喫煙量を減らしている人)の治療アルゴリズム

 禁煙に気が進まない人や禁煙できないと感じている人には,紙巻きタバコによるニコチンを併用NRTあるいは電子タバコに置き換えて,害を最小化することを奨励する。
併用NRT 電子タバコ/ベイピング器具
20本/日を超える喫煙,または起床後30分以内に喫煙:
21mg(24時間用)または25mg(16時間用)貼付剤と,使用者の選択により口腔/点鼻NRT製剤で開始する
最初に患者が拒否をしても,NRT薬の提供を継続する
喫煙欲求出現時に喫煙者がNRT薬をすぐに利用できるようにしておくべきである
電子タバコ使用者が摂取するニコチン量は,器具,リキッドの量,リキッドのその他の成分,使用頻度,吸入の量と深さによって様々である。喫煙への依存の程度が高いほど,高濃度のニコチンが推奨される
以下におおよその目安を示す:
20本/日の喫煙をしていた場合はニコチン20mg/日まで必要となる可能性がある
喫煙欲求出現時に喫煙者が電子タバコをすぐに利用できるようにしておくべきである。NRTの場合と同様に,喫煙者には喫煙と喫煙の間に電子タバコを使用し,喫煙しない間隔を長くすることを勧めるべきである
20本/日未満の喫煙かつ起床後30分以内には喫煙しない:
14mg(24時間用)または15mg(16時間用)貼付剤と,使用者の選択により口腔/点鼻NRT製剤の,両方またはいずれかで開始する
最初に患者が拒否をしても,NRT薬の提供を継続する
喫煙欲求出現時に喫煙者がNRT薬をすぐに利用できるようにしておくべきである

現在のところ,英国の国民保健サービス(NHS)で電子タバコを処方することはできない。医師は地域の禁煙政策を参照し,各精神科入院環境で使用できる電子タバコの種類と入手方法を確認すべきである。


<編集協力者コメント>

日本では2006年4月より禁煙治療に対して健康保険が適用されるようになり,2020年度からは加熱式タバコ使用者も健康保険による禁煙治療の対象として認められるようになった。さらに,2020年12月からは医療機器として認められた「禁煙治療用アプリ及びCOチェッカー」が保険診療で使えるようになった。

(内田 貴仁)

参照文献
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  3. National Institute for Health and Care Excellence. Smoking: harm reduction. Public Health Guidance [PH45]. 2013 (last checked March 2017); https://www.nice.org.uk/guidance/ph45.
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