モーズレイ処方ガイドライン第14版(The Maudsley PrescribingGuidelines inPsychiatry 14thEdition)menu open

処方の一般的原則

  • 可能な限り最小用量にとどめるべきである。用量は個々の患者で有効性を示す最小用量に調節すべきである(最小有効量の項を参照)。増量は1-2週間評価して明らかに十分な効果がみられない場合のみにすべきである(2週間で効果が認められない場合,用量または薬剤を変更しない限り,その後も十分な効果がみられないことが強く予測されることを示すエビデンスが蓄積されている)。
  • 持効性注射剤(LAI)では,用量を変えなくても血漿中濃度は投与開始から6-12週間でかなり上昇する(本Chapterのデポ剤の薬物動態に関する項を参照のこと)。このため,この期間の増量は評価が難しい。望ましい方法は,特定の用量で経口剤の有効性と忍容性を確認し,次にその薬剤のLAIの等価換算量を算出することである。これが不可能である場合,個々の患者に対するLAIの目標用量は,臨床試験において至適であることが実証されている用量とすべきである(しかし,そうしたデータは従来のLAIについては常に得られているわけではない)。
  • 多くの患者では,抗精神病薬単剤治療(気分安定薬や鎮静薬を併用する場合もある)が推奨される。例外的な状況(例:クロザピン増強療法)を除いて,抗精神病薬の多剤併用は避けるべきである。多剤併用では副作用の頻度が増加し,特にQT延長や心臓突然死に関連するリスクが高くなる(本Chapterの抗精神病薬の併用療法に関する項を参照のこと)。
  • 抗精神病薬の併用は,単剤治療(クロザピンを含む)が奏効しないことが明らかな場合にのみ行うべきである。このような場合には,標的とする症状に対する併用療法の効果と併用療法に伴う副作用を注意深く評価して記録する。明らかな有益性がなければ単剤治療に戻すべきである。
  • 一般的に,抗精神病薬は「随時・必要時の」鎮静薬として使用すべきではない。ベンゾジアゼピン系薬剤や一般的な鎮静薬(プロメタジン等)の,期限を設定した処方が推奨される(本Chapterの急速鎮静に関する項を参照のこと)。
  • 抗精神病薬に対する反応は一般的に認められた評価尺度で評価し,結果をカルテに記録する。
  • 抗精神病薬投与中は身体状態の綿密なモニタリング(血圧,脈拍,ECG,血糖,血中脂質等)を行うべきである(本Chapterで該当する項を参照)。
  • 抗精神病薬を中断する場合は,双曲線的に減量するレジメンで用量を緩やかに減らし,中断症状や反跳精神病のリスクを最小限に抑える。

本項は参照文献を示していない。詳細かつ参照文献を示した指針については本Chapterの関連する各項を参照のこと。

(谷 英明)