双極性障害患者の身体モニタリング1, 2
すべての患者で 行うべき検査 |
特定の薬剤を投与しているときに行うべき検査 | |||||
検査,測定 事項 |
最初の 検査 |
毎年の 検査 |
抗精神病薬 | リチウム | バルプロ酸 | カルバマゼピン |
甲状腺機能 | 行う | 行う | 開始時,および6ヵ月毎。変化の所見が認められる場合には検査回数を増やす | |||
肝機能検査 (LFT) |
行う | 行う | 最初の1年間は3ヵ月毎,その後は年1回 | 最初の3ヵ月間は月1回,その後は年1回 | ||
腎機能 (eGFR) |
行う | 行う | 開始時,および6ヵ月毎。悪化の所見が認められる場合,相互作用のある薬剤の投与を開始した場合は検査回数を増やす | |||
電解質,尿およびクレアチニン(EUC) | 行う | 行う | 開始時,その後は3-6ヵ月毎(血清カルシウムを含む) | 最初の3ヵ月間は月1回,その後は年1回 | ||
全血球数 (FBC) |
行う | 行う | 臨床的に適応となるときのみ | 最初の1年間は3ヵ月毎,その後は年1回 | 最初の3ヵ月間は月1回,その後は年1回 | |
血(血漿)糖値 | 行う | ルーチンの健診の一部として行う | 開始時,その後は4-6ヵ月毎(オランザピンを使用している場合は1ヵ月後)。高値の場合には検査回数を増やす | |||
脂質 | 行う | ルーチンの健診の一部として行う | 開始時,および3ヵ月後。高値の場合には最初は検査回数を増やす | |||
血圧および脈拍 | 行う | ルーチンの健診の一部として行う | 投与されている抗精神病薬が起立性低血圧を起こす可能性がある場合には,増量時に検査を行う | |||
プロラクチン | 小児と青少年のみ | 開始時,およびプロラクチン上昇の症状がある場合 クエチアピン,アリピプラゾールではプロラクチン上昇の可能性は低い。オランザピン,アセナピンではごく稀に起こる。リスペリドン,FGAでは非常によくみられる |
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ECG | 心血管疾患または危険因子から適応となる場合 | 心血管疾患に罹患している,またはその危険因子がある場合は開始時(またはハロペリドールを使用するとき)。関連する異常があった場合には,最低でも増量毎に再検査を行う | 心血管疾患に罹患している,またはその危険因子がある場合は開始時。関連する異常があった場合には,最低でも増量毎に再検査を行う | 心血管疾患に罹患している,またはその危険因子がある場合は開始時。関連する異常があった場合には,最低でも増量毎に再検査を行う | ||
胴囲および/またはBMI | 行う | ルーチンの健診の一部として行う | 最初の3ヵ月間は月1回,その後は年1回 | 開始時, その後は6ヵ月毎 | 最初の1年間は3ヵ月毎,その後は年1回 | 開始時,および体重が急に増加したときに必要に応じて行う |
薬剤の血漿中濃度 | 投与開始から少なくとも3-4日後。および血漿中濃度が安定するまで用量の変更毎に3-4日後に測定する。その後最初の1年間は3ヵ月毎,以後はほとんどの患者で6ヵ月毎(NICE2を参照のこと) | 効果と忍容性をみながら用量を調節する。効果がない,アドヒアランス不良,毒性等の所見がない限り,ルーチンとして測定すべきではない | 投与開始から2週間後,および用量変更から2週間後。その後は,効果がない,アドヒアランス不良,毒性等の所見がない限り,ルーチンとして測定すべきではない |
ラモトリギンの投与を受けている患者は毎年の健康診断が必要だが,特別な検査は不要である。ただし血漿中濃度から高用量を検討できるかどうかが示される可能性がある。
(仁王 進太郎)
参照文献
- Ng F, et al. The International Society for Bipolar Disorders (ISBD) consensus guidelines for the safety monitoring of bipolar disorder treatments. Bipolar Disord 2009; 11:559–595.
- National Institute for Health and Care Excellence. Bipolar disorder: assessment and management. Clinical Guidance [CG185]. 2014 (Last updated February 2020); https://www.nice.org.uk/guidance/cg185 .